落合川ボランティアの活動

東京多摩西部の東久留米。ここに、時折このブログで紹介しているように落合川という湧水起源の小川が流れ、東京近郊の貴重な清流として当地東久留米の観光資源としても知られるようになっている。しかし、50年前は。鼻をつまんでも近寄れない臭いドブ川だった。長男が生まれたころだったので、絶対に近寄らぬようきつく言い含めたものだった。実際にこの川に入った教会の牧師さんが破傷風になるという大事件も起こった。それが、現在のような清流として蘇るには流域住民や市役所の非常な努力の賜物であったに違いない。あったに違いない、というのはその蘇りの過程についてはほとんど知らないからである。勿論、川が汚れる前は清流だった。なにしろ流域には縄文人の暮らし跡があるくらいである。それが、近年民家が増え団地が増えるにつれ、その生活排水が大量に流れ込むことで汚染河川となってしまっていた。それゆえ下水道が完備して生活排水の流入阻止が物理的に可能になるまではどうしようもなかったといえるだろう。そして、今のように清流として川が生命を取り戻すには、流域住民の理解と川への愛着が何よりも重要であったことは明らかである。それと、清流になったのちは、それを保つための不断の努力が必要であることは言うまでもない。その清流保持の活動は「水辺の生きもの研究会」というボランティアの活動に負うところが大きい。この団体のユニークな点は河川の清掃のみならず、河川に生息する動植物の生態研究を行っていることである。

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研究会からは定期的に会報が発行されて、調査結果等が報告される。最新の会報にはこんな記事が載っていた。

・鳥図鑑

ヒドリガモ。落合川の冬鳥として代表的なのは、コガモオナガカモ、ヒドリガモである。今回はヒドリガモについて。飛んだとき腰の白い模様が目立つカモ類。ロシア南部の亜寒帯で繁殖し、東南アジアの越冬地に行く途中の群れの一部が日本に途中下車して落合川に飛来する。落合川でカモにパンを投げている人がいるが、これは良くない。パンには人工的な油質や栄養物が含まれているので鳥は栄養過多になり、厳しい自然界で生きられない体になって何千キロもの渡りに耐えられなくなるからである。

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ホトケドジョウ

これは落合川が清流であることの証として貴重な魚であり、絶滅危惧種でもある。実際、生息地は日本全国非常に稀である。清水であり且つ水温変化の少ない環境でしか生息できない魚類である。冬では水温5度以下では死んでしまい、夏水温が30度に近づくと死んでしまうといわれている。水辺研究会の重要な調査目的はホトケドジョウの生息確認である。落合川が湧水起源であるため水温が四季を通じて安定していることがホトケドジョウの生息を可能にしている。

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・厳冬に活動する昆虫

暖かい日に一時的に冬眠から覚めて動き回る虫もいるが、寒い冬の夜にだけ飛び回る昆虫がいる。この仲間はフユシャクと呼ばれる蛾。東久留米でも10種類ものフユシャクを見ることができる。

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・希少な水草イケノミズハコベ

合川を代表する水草。東京都の2010年レッドリストによれば北多摩地域では絶滅したとされているほど希少な植物。これの定期的な棲息確認も重要な調査項目。

なお、私が時折落合川と同時に黒目川と呼ぶことがありますが、実は本流が黒目川で、落合川はその支流として東久留米で黒目川に合流しています。